任務から逸脱した行為

自民党佐藤正久参議院議員が情報保全隊に監視されているというニュースがあります。どうやら大臣からの任務ということでやっていますが、当然正式な回答は「やってない」とのことであります。しかし、情報保全隊の本来任務から考えるとありえないことでありますので、この事実(?)を知ってもらうとともに、情報保全隊という部隊の役目について説明したいと思います。
情報保全隊は、日本で唯一の防諜組織でカウンターインテリジェンスを担当している部隊であります。各自衛隊に存在しており全国各地に部隊・分遣隊などを置いています。任務は情報保全・隊員保全・それに関する指導監督などです。wikiにも掲載されており、防衛白書などをもとにした情報ですので、詳しく知りたい方はwikiなどを参照していただけると助かります。
さて、そのような組織ですので、当然のことながら情報保全のため、自衛隊組織だけでなく関連組織、関連企業、反自衛隊団体などの動向調査も任務に含まれます。これも自衛隊の情報流出を未然に防止するとともに、反自衛隊や国家危機に直結する行動などを監視して未然に芽を摘むという性格を持っています。
さて、その情報保全隊自民党佐藤正久議員を監視しているほか、元航空幕僚長の田母神氏の監視を行っているということらしいです。この話を聞いた佐藤議員は、直接、防衛省で事実確認をとったら「大臣から指示してないし知らない。現場が勝手にやっているかも」ということでした。
まず、この2人を監視対象にする理由が本来任務から照らしても任務から逸脱しています。田母神氏は元航空幕僚長であり右派の論客。佐藤議員も自民党に所属する右派議員です。さらに言えば、どちらも自衛隊OBであり親自衛隊の立場にあります(また、法的にも元自衛隊員も情報の守秘義務を有しています(根拠.自衛隊法))。そのような人達が、情報保全隊の調査対象にしなければならない理由があるでしょうか?情報保全隊独自で調査を行うならば、彼らが情報流出を行う可能性があるか、反自衛隊・反国家的な言動を根拠としなければならない。しかし、そのどちらも根拠としてはあまりにも希薄で根拠たりえず、保全隊が独自で動く理由は存在しない(むしろ、前国家公安委員長あたりは朝鮮総連とパイプラインがあり、そちらを対象にすべきだろう)。
では、この超法規的な措置はどうすれば行えるか?
答えは簡単。指揮系統の上位が特務事項として命令すればいいのだ。どの規則類においても指揮系統の上位からの命令に従う特例事項が書かれている。これを根拠とするならば、簡単に組織や部隊は動く。というか動かなければならない(命令違反になりますから)。ということは統合幕僚長直轄組織である自衛隊情報保全隊は、統合幕僚長ないしは防衛大臣(防衛副大臣)の指示がなければならない。しかし、統合幕僚長は考えにくく、例の来賓の発言に関する制限を加えた通達の経緯を考えると防衛大臣ないしは副大臣以外に考えられないのだ。
しかし、その特例命令だとしても、情報保全隊の本来任務から逸脱していることには変わらない。単に民主党や現政権のためであれば、それは組織の私物化であり、国民の奉仕者である公務員を私物化するという愚は、国民全体に対する侮辱であり、民主党のために無駄に税金を投入していることになる。
確かに自衛隊員は命を賭して任務に従事する責任と死ねといえば死ねる厳格な指揮系統・命令系統を守る責務を負っている。しかし、自衛隊民主党の私的組織ではなく、この監視が本当であれば、政府は自らの意思に反する者の言論を監視・封殺しようとする警察国家を作ろうという意思が見えてくる。
そう思われたくなければ、速やかに情報保全隊を本来任務に従事させる責任が現政権にあると考えます。